アオウル博士: ITとセキュリティの専門家。ミマワリの頼れる相談相手。
ミマワリ: アオウルのキャラクター。PCやスマホは毎日使うけど、たまにツールがうまく使えず困ってしまう。

うーん、うーん…。博士、ちょっと助けてください!Googleスプレッドシートに新しく追加された「AI関数」がすごいって聞いたんです!ついに日本語にも本格対応したっていうから、早速使ってみようと思ったんですけど…。

おぉ、ミマワリ君。どうやら新しい技術に挑戦しておるようじゃな。Gemini in Google Workspace のAI関数のことじゃろう。確かに、あれは強力なツールじゃが、少々クセがあってのう。どこで困っておるんじゃ?
それが…「使い方がわからない」というか、「特定の指示でエラーが出る」というか…。やりたいことは、このアンケートの自由回答欄から「不満な点」だけを抜き出すことなんです。でも、関数を入れても`#ERROR!`って表示されたり、全然関係ない言葉が抜き出されたりして…。

なるほど。ミマワリ君の悩みは、まさに今、多くの人が検索している「AI関数のつまずきポイント」そのものじゃ。よし、この機会にAI関数の基本から、うまく使いこなす「指示(プロンプト)のコツ」まで、徹底的に解説して進ぜよう!
第1章:そもそも「AI関数」って何ができるの?
お願いします、博士!そもそも、このAI関数って、SUM関数とかVLOOKUP関数とは何が違うんですか?

良い質問じゃ。従来の関数は「決まったルール(計算式や検索条件)」に基づいて、必ず「1つの正しい答え」を返すものじゃった。じゃがAI関数は、「曖昧な人間の言葉(自然言語)による指示」を理解し、文脈を読み取って「AIが最適と判断した答え」を返してくれるんじゃ。
2025年10月現在、スプレッドシートで主に使えるAI関数は、大きく分けて以下の4つじゃ。
① `AI.EXTRACT` (抽出)
テキストの中から、指示した特定の情報だけを抜き出す。ミマワリ君がやろうとしていた「不満な点を抜き出す」のは、これじゃな。他にも「住所から郵便番号だけ」「メール本文から会議の日時だけ」といったことができる。
② `AI.CLASSIFY` (分類)
テキストを指定したカテゴリに分類する。「顧客の声を『ポジティブ』『ネガティブ』『中立』に分類する」「問い合わせ内容を『料金』『機能』『その他』に仕分ける」など、大量データの整理に役立つ。
③ `AI.FILL` (自動入力)
いくつかの「お手本(パターン)」を示すと、残りの空白セルをAIが推測して自動で埋めてくれる。例えば、いくつかの商品名から「商品カテゴリ」を推測させたり、氏名から「姓」と「名」を分割させたりできる。
④ `AI.TABLE` (表の自動生成)
「日本の主要都市の人口トップ5を、都市名と人口の表にして」といった指示だけで、AIが知識を基に表を丸ごと生成してくれる。リサーチ作業に使える機能じゃ。
そして最大の進化が、ミマワリ君も言っていた通り、これらの指示(プロンプト)が高精度な日本語に対応したこと。これにより、我々日本人ユーザーにとっての活用ハードルが一気に下がったんじゃよ。
第2章:【つまずきポイント①】「使い方がわからない!」を解決する”神プロンプト術”
なるほどー!機能はすごくよく分かりました!じゃあ、早速僕のアンケートで試してみますね。えーっと、A列に自由回答があります。A2セルには「価格は高いが、サポート体制が手厚くて満足。ただ、アプリの起動が少し遅いのが難点。」と入っています。B2セルに…。
`=AI.EXTRACT(A2, “不満な点”)`
…あれ?博士、結果が「価格は高い」「アプリの起動が少し遅い」になりました。「価格は高い」は不満じゃないかもしれないのに…。それに、別の行だと「満足」とか「手厚い」とか、ポジティブな言葉まで抜き出されちゃいました!

ふむ。それがAI関数の最初の落とし穴じゃ。ミマワリ君の指示`”不満な点”`は、人間にとっては簡単じゃが、AIにとってはあまりにも曖昧なんじゃ。
AIは「不満」という言葉や、それに類するネガティブな響きの単語を機械的に探そうとする。だから「価格は高い」も「遅い」も「難点」も、全部拾ってきてしまう。AIにうまく仕事をしてもらうには、「AIが迷わない、具体的な指示」を出す必要があるんじゃ。
【博士直伝】AIが迷わない「神プロンプト」のコツ
コツ①:命令は「具体的」かつ「明確」に
× 悪い例: `”不満な点”` (曖昧すぎる)
◎ 良い例: `”この文章から、サービスや機能に対するネガティブな意見や不満点を、そのまま抜き出してください”`
コツ②:AIに「役割」を与える
AIは「何の専門家として振る舞えばよいか」を指示されると精度が上がる。
◎ 良い例: `”あなたは優秀なカスタマーサポート担当者です。以下の顧客のフィードバックから、改善が必要な問題点のみを要約してください”`
コツ③:「出力形式」を指定する
期待通りの形で出力させると、後工程が楽になる。
◎ 良い例: `”~を抜き出してください。複数ある場合は、カンマ(,)で区切ってください”`
◎ 良い例: `”~を抜き出してください。該当するものがない場合は、『なし』と回答してください”`
さあ、ミマワリ君。A2セルの「価格は高いが、サポート体制が手厚くて満足。ただ、アプリの起動が少し遅いのが難点。」に対して、このプロンプトで試してごらん。
`=AI.EXTRACT(A2, “この文章から、顧客が明確に『不満』や『問題点』として指摘している箇所のみを抜き出してください。単なる感想(例:価格が高い)ではなく、改善を求めている点を重視してください。”)`
おおっ!すごい!今度はちゃんと「アプリの起動が少し遅いのが難点」だけが抜き出されました!「価格は高い」は無視されました!プロンプトって、こんなに長く書いてもいいんですね!

その通り!むしろ、AI関数を使いこなすには「いかに具体的に、丁寧に指示を書くか」が全てなんじゃ。これは `AI.CLASSIFY` でも同じじゃよ。
例えば、問い合わせ内容を分類するとき:
× 悪い例: `”カテゴリ分け”` (これではAIが勝手に「A」「B」などと分類してしまう)
◎ 良い例: `”この問い合わせ内容を、『料金』『使い方』『不具合報告』『その他』のいずれかに分類してください”`
このように、分類先の選択肢を明示するのが非常に重要なんじゃ。
第3章:【つまずきポイント②】「エラーが出て動かない!」の完全処方箋
博士、コツはわかったんですが、今度は別のエラーが出ました!プロンプトを色々いじっていたら、急にセルが `#ERROR!` って赤くなっちゃって…。
`=AI.EXTRACT(A2, この文章から不満点を抜き出す)`
あっ!もしかして…。

うむ、ミマワリ君、気づいたようじゃな。AI関数も「関数」である以上、基本的なルールは守らねばならん。エラーには必ず原因がある。よくあるエラーと対処法をまとめるぞ。
エラー①: `#ERROR!` または `#NAME?` (構文エラー)
原因: まさに今ミマワリ君がやったミスじゃ。プロンプト(指示文)は、必ず「ダブルクォーテーション(`”`)」で囲む必要がある。
× 悪い例: `=AI.EXTRACT(A2, 不満点を抜き出す)`
○ 良い例: `=AI.EXTRACT(A2, “不満点を抜き出す”)`
また、関数名をタイプミス(例:`AI.EXTACT`)しても `#NAME?` になる。単純なミスじゃが、意外と多いぞ。
エラー②: `#N/A` または 期待と違う結果(プロンプトの問題)
原因: AIが指示を理解できなかったか、対象テキストに該当する情報が見つからなかった場合じゃ。または、プロンプトが曖昧すぎてAIが混乱した場合(第2章の例じゃな)。
対処法: プロンプトをもっと具体的に書き直す。「こういう場合は『なし』と答えて」と、例外処理を指示に含めるのも有効じゃ。
エラー③: `Loading…` から進まない / タイムアウトエラー
原因: 一度に処理させようとするデータ量が多すぎる。例えば、1000行の自由回答を一気に関数で処理しようとすると、AIの処理が追いつかないことがある。
対処法: 欲張らないことじゃ。まずは10行程度で試してみて、うまくいくことを確認する。その後、100行ずつに分けるなど、小分けにして処理を実行するんじゃ。
エラー④: `AI.FILL` が期待通りに埋まらない
原因: `AI.FILL` は、AIがパターンを学習するための「お手本」が必要じゃ。このお手本が少なすぎたり、パターンが一貫していなかったりすると、AIは法則を見つけ出せん。
対処法: 最低でも2~3行、できれば5行ほどのお手本(入力と期待する出力のペア)を人間が手入力する。例えば、「氏名」から「姓」を抜き出したいなら、3行目まで手入力してから、4行目以降で `AI.FILL` を試すんじゃ。
第4章:博士直伝!AI関数を120%使いこなす応用テクニック
エラーも解決できました!プロンプトを具体的にして、お手本を見せればいいんですね。なんだかAIと対話してるみたいで楽しくなってきました!博士、もっとすごい使い方ってないですか?

うむ、基本をマスターすれば応用は無限大じゃ。いくつか強力なテクニックを伝授しよう。
応用①:`AI.EXTRACT` で複数の情報を一気に抜き出す
`AI.EXTRACT` は、実は複数の情報を同時に抽出できる。例えば、A2セルに「10月26日に東京本社ビル5階の会議室Aで、新製品のキックオフミーティングを開催します。」とある場合。
B2セルに「日付」、C2セルに「場所」、D2セルに「目的」を抜き出したいとする。この場合、プロンプトをB1, C1, D1セルに書いておくと便利じゃ。
B1: `”会議の日付”`
C1: `”会議の場所”`
D1: `”会議の目的”`
そしてB2セルにこう入力する。
`=AI.EXTRACT(A2, B1:D1)`
こうすると、B2に「10月26日」、C2に「東京本社ビル5階の会議室A」、D2に「新製品のキックオフミーティング」と、一発で分割抽出してくれるんじゃ!
応用②:`AI.TABLE` で面倒なリサーチ作業を自動化
これは単一のセルで完結する強力な機能じゃ。例えば、A1セルにこう入力するだけで…
`=AI.TABLE(“太陽系の惑星について、名前、直径(地球比)、主な特徴をまとめた表を作成して”)`
A1セルを起点に、AIが「水星」「金星」「地球」…と、指示通りの表を自動で生成してくれる。市場調査のたたき台作成や、ブレインストーミングの材料集めに最適じゃ。
応用③:プロンプト自体を関数で組み立てる
これは上級テクニックじゃが、プロンプトは固定の文字列である必要はない。例えば、C1セルに「ポジティブな意見」と入力されている場合。
`=AI.EXTRACT(A2, “この文章から” & C1 & “を抜き出してください”)`
このように `&` を使ってセル参照を組み合わせれば、C1セルを「ネガティブな意見」に変えるだけで、関数が自動で「ネガティブな意見を抜き出す」ように変化する。分析の切り口を柔軟に変えたいときに便利じゃぞ。
第5章:暴走させない!AIの「クセ」と上手に付き合う心構え
博士、すごいです!AI関数、最強じゃないですか!これさえあれば、僕のデータ集計作業、全部自動化できちゃいます!もうAIに全部お任せです!

【警告】ミマワリ君、その考えが一番危険じゃ!
AIは強力な「アシスタント」ではあるが、「全知全能の神」ではない。AIには特有の「クセ」があり、それを理解せずに丸投げすると、とんでもないミスにつながるぞ。
心構え①:AIは平気で「ウソ」をつく(ハルシネーション)
特に `AI.TABLE` などで外部の知識を使わせる場合、AIは「それらしい答え」をデッチ上げることがある。例えば「日本の人口」を尋ねたら、微妙に古いデータや、全くのデタラメな数値を返してくるかもしれん。AIが生成した「事実」は、必ず人間の目でファクトチェック(事実確認)をすること。絶対に鵜呑みにしてはならん。
心構え②:機密情報の扱いは慎重に
Google Workspaceは高いセキュリティ基準を持っておるが、AI関数で処理するデータ(例えば、顧客の個人情報や、社外秘の財務データ)が、AIの学習に使われない設定になっているか、会社のセキュリティポリシーを必ず確認すること。判断に迷ったら、安易にAI関数を使わず、情報システム部門に相談するんじゃ。
心構え③:AIは「指示待ち」である
AIは、君が指示したことしかやらん。そして、指示が曖昧なら曖昧な結果しか返せない。AIの出力がイマイチなのは、AIがバカなのではなく、十中八九、指示(プロンプト)が悪いんじゃ。「どう聞けば、期待通りの答えが返ってくるか?」を考える、人間の「質問力」こそが、AI時代に最も重要なスキルなんじゃよ。
はっ…!危ないところでした。便利さのあまり、思考停止になるところでした…。AIはあくまで「アシスタント」。最終的な責任は僕にあって、僕がAIを使いこなすために「質問力」を磨かなきゃいけないんですね。

その通りじゃ!AI関数は、君の「面倒な単純作業」を肩代わりさせ、君が「考える」という、人間にしかできない重要な仕事に集中するためのツールじゃ。エラーを恐れず、色々なプロンプトを試して、君だけのアシスタントを育てていくんじゃぞ!