アオウル博士: ITとセキュリティの専門家。ミマワリの頼れる相談相手。
ミマワリ: アオウルのキャラクター。PCやスマホは毎日使うけど、たまにツールがうまく使えず困ってしまう。

Excelが重い、フリーズする原因は?データ量だけではありません。専門家が「条件付き書式」「見えないオブジェクト」「外部リンク」という3大要因を徹底検証。今すぐ試せる具体的な軽量化テクニックから、PC側の設定見直しまで、会話形式でわかりやすく解説します。
うぅ…博士、助けてください…。今、月次の集計レポートを作ってるんですけど、Excelファイルがめちゃくちゃ重いんです!
ファイルを開くだけで1分以上かかるし、セルに数字を1個入力するたびにカーソルがグルグル回って…さっきとうとう「応答なし」でフリーズしちゃいました。これじゃ仕事になりません!

おお、ミマワリ君。それは大変じゃな。「Excelが重い・固まる」は、多くのビジネスパーソンが直面する永遠の課題じゃ。締切前のフリーズほど、心のダメージが大きいものはないからのぅ。
おそらくミマワリ君は「データ量が多いから仕方ない」と思っておらんか?実はそこが、多くの人が陥る「ギャップ(思い込み)」なんじゃよ。
えっ?ギャップ?だって、データは先月分の1万行を追加したばかりですし、VLOOKUP関数もいっぱい使ってるし、それが原因じゃないんですか?

もちろん、データ量や複雑な関数も原因の一つではある。しかし、Excelがフリーズするほどの「致命的な重さ」は、データ量(=目に見える重さ)ではなく、別の「目に見えないお荷物」が原因であることが非常に多いんじゃ。
今日はその「お荷物」の正体を暴き、ミマワリ君のExcelをサクサクに生き返らせる「ビフォーアフター」を実践してみよう。
第1章:【検証】Excelを重くする「3つの秘密」とは?
目に見えないお荷物…?そんなスパイ映画みたいな話、Excelにあるんですか?

あるんじゃよ。多くの人が知らない、あるいは気づかないうちに溜め込んでしまう「重さの秘密」がな。Excelが重くなる「隠れた真犯人」トップ3をランキングで紹介しよう。
第1位:大量の「条件付き書式」
これがダントツで多い原因じゃ。「特定の数値より大きかったらセルを赤くする」といった設定のことじゃな。これが数万、数十万のセルに設定されていると、どうなると思う?
ミマワリ君がたった一つのセルに数値を入力しただけで、Excelは「うわっ!入力があった!他の数十万個のセルの色を変える必要があるか、今から全部チェックし直します!」と、毎回パニック状態で再計算を始めるんじゃ。これが「入力が遅れる」最大の原因じゃ。
第2位:見えない「オブジェクト(図形)」
「図形なんて使ってませんよ」と言う人も油断できん。他の人が作ったグラフや図形をコピー&ペーストした時、あるいはWebから表をコピーした時、高さや幅がゼロになった「透明な図形」や「小さなゴミ」が、シート上に大量にコピーされていることがあるんじゃ。
これらは目には見えんが、Excelは律儀に「ここに見えない図形が1000個あるぞ」と記憶し続ける。結果、スクロールするたびにカクカクしたり、ファイルサイズが異常に大きくなったりする。
第3位:切れた「外部リンク」
これは「ファイルを開くときにフリーズする」典型的な原因じゃ。昔、参照していた別のExcelファイル(例:¥¥Server¥古いフォルダ¥先月データ.xlsx)が、移動したり削除されたりして「リンク切れ」になると、Excelはファイルを開くたびに「ご主人様が昔見ていたファイルはどこだ!?ネットワーク中を探し回るぞ!見つかるまで応答せん!」と、存在しないファイルを探し続けて固まってしまうんじゃよ。
うわぁ…全部心当たりがありすぎます…。
確かにこのファイル、色を付けるルール(条件付き書式)がいっぱい入ってるし、色んな人からデータをコピペして作ったし、昔のファイルも参照してたかも…。まさに「お荷物」だらけだ!

第2章:【実践】Excel軽量化!お荷物撲滅ビフォーアフター
うむ。原因がわかれば、あとは「検証」と「駆除」あるのみじゃ。今から言う手順で、その重いファイルのお荷物を一層してみよう。劇的なビフォーアフターが体験できるかもしれんぞ。
【警告】必ず作業前に、ファイルのコピー(バックアップ)を取っておくんじゃ!万が一、必要なものまで消してしまうと大変じゃからな。
は、はい!今、「集計レポート(バックアップ)」って名前でコピーしました!準備万端です!

よし。では、犯人ランキングの逆、第3位から順に潰していこう。
検証①:「外部リンク」を断ち切る
- Excelの上部メニューから「データ」タブをクリックする。
- 「クエリと接続」グループにある「リンクの編集」ボタンを押す。(※ボタンが灰色で押せない場合は、外部リンクがないということじゃ。次の検証に進んでよし)
- 開いたウィンドウに、参照しているファイルの一覧が表示される。
- 一覧に「状態:不明」や「エラー:ソースが見つかりません」となっているものがあれば、それが犯人じゃ。
- そのリンクを選択し、「リンクの解除」ボタンを押す。すると、そのセルは数式から「値」に変わる。
- 全ての怪しいリンクを解除したら、「閉じる」を押す。
検証②:「見えないオブジェクト」を一網打尽にする
- 「ホーム」タブをクリックする。
- 一番右にある「検索と選択」をクリックし、「ジャンプ」を選択する。(または Ctrl + G キー)
- 開いたウィンドウの左下にある「セル選択…」ボタンを押す。
- 「選択オプション」ウィンドウが開くので、「オブジェクト」にチェックを入れ、「OK」を押す。
- これで、シート上にある全ての図形やグラフ(目に見えないゴミも含む)が選択された状態になる。
- もし、ミマワリ君が「このシートにグラフや図形は一切必要ない」と断言できるなら、このままキーボードの「Delete」キーを押すんじゃ!
検証③:諸悪の根源「条件付き書式」をリセットする
- これが一番効果的かもしれんぞ。重いシートを選択した状態で、「ホーム」タブをクリックする。
- 「スタイル」グループにある「条件付き書式」をクリックする。
- 「ルールのクリア」にマウスを合わせ、「シート全体からルールをクリア」を選択する。
- これで、そのシートに設定されていた全ての「色が自動で変わる」ルールが削除される。一時的に見た目は寂しくなるが、重さとのトレードオフじゃ。
さあ、ミマワリ君。重くなっているシート全てに、この3つの検証作業を実行して、一度ファイルを「上書き保存」し、Excelを閉じてから、もう一度ファイルを開き直してみてごらん。
は、はい!今、言われた通り3つ全部やってみました!特に「オブジェクト」を選択したら、シートのあちこちに小さな点が選択されてビックリしました…。全部デリートして、条件付き書式もクリアして…保存して、閉じて…と。
(数秒後)
博士!すごい!さっきまで1分かかってたファイルが、5秒で開きました!
セルに数字を入力しても、一瞬で反映されます!フリーズしません!まるで新品のExcelみたいです!これぞ劇的ビフォーアフター!

第3章:それでも重い?「ファイル」と「PC環境」の比較
うむ、大成功じゃな!ミマワリ君のExcelは、まさに「見えないお荷物」で窒息寸前じゃったわけじゃ。
しかし、世の中には今の手順でも改善しない、さらに手強い「重いExcel」も存在する。その場合は、問題が「ファイル側」にあるのか、ミマワリ君の「PC・Excelアプリ側」にあるのか、問題を切り分ける「比較検証」が必要になるんじゃ。
PC側の問題、ですか?

そうじゃ。もし、さっきの手順でもまだ重い場合に試すべき「切り分け検証」を伝授しよう。
■ PC・Excelアプリ側の問題か?
【検証①:PCの再起動】
- 基本中の基本じゃが、PCを何日も再起動していないと、メモリが解放されずにPC全体の動作が重くなっていることがある。まずは再起動じゃ。
【検証②:Excelの「セーフモード」起動】
- Excelには、業務を便利にするための「アドイン」という追加機能が入っていることがある。これが悪さをして重くしているケースじゃ。
- Ctrlキーを押しながらExcelアイコンをクリックすると、「セーフモードで起動しますか?」と聞かれる。「はい」を選ぶと、アドインを一切読み込まずに素のExcelが起動する。この状態でファイルを開いてみて、もし軽くなるなら、犯人は「アドイン」じゃ。
【検証③:Officeの修復】
- Excelのプログラム自体が一部壊れている可能性もある。「コントロールパネル」の「プログラムのアンインストール」から、Microsoft Officeを選択し、「変更」→「修復」を試してみるんじゃ。
■ それでもダメなら「ファイル側」の最終手段
【検証④:シートの「引っ越し」】
- ファイル自体に、目に見えない「破損」情報が蓄積している場合がある。
- 新しいExcelファイルをまっさらに新規作成し、重いファイルのシートから「データ部分だけ」をコピーして、新しいファイルのシートに「値として貼り付け」するんじゃ。書式や関数は再設定になるが、ファイルに溜まった「垢」を完全に落とす最終手段じゃ。
第4章:重くしないために!Excelと賢く付き合う「秘密」の保存術
なるほど…奥が深いですね。今回は第2章の方法で解決しましたけど、今後はファイルを「重くしない」ための予防策も知りたいです!

うむ。良い心がけじゃ。「掃除」の方法を知るより「汚さない」方法を知る方が賢明じゃからな。最後に、ファイルを軽く保つための「秘密の保存術」を伝授しよう。
- ①「シート全体」の書式設定をやめる:「A列全体を選択して中央揃え」などをやると、Excelは最終行(104万行目)まで「中央揃えにせねば」と記憶してしまう。必要な範囲だけを選択して書式設定する癖をつけるんじゃ。
- ②条件付き書式は「限定的」に使う:本当に必要なセル(例:合計欄だけ)に限定して使う。色を付けたいだけなら、手動で色を付けた方がよほど軽快じゃ。
- ③「テーブル機能」を使う:データを「テーブルとして書式設定」すると、Excelがデータを効率的に管理してくれる。数式も自動でコピーされ、見た目も整う。重いVLOOKUPの代わりに、より高速な「XLOOKUP」関数(Microsoft 365)を使うのも良い手じゃ。
- ④【秘密の保存術】.xlsb形式で保存する:これが最大の秘密じゃ。Excelファイルを「名前を付けて保存」する際、ファイルの種類を「Excel バイナリ ブック (*.xlsb)」にするんじゃ。
えっ?「.xlsb」?いつも「.xlsx」で保存してますけど、違うんですか?

「.xlsx」はXMLというテキストベースの形式で、汎用性が高いが、読み書きに時間がかかることがある。「.xlsb」は「バイナリ」という、Excelが直接理解しやすい機械語に近い形式で保存するんじゃ。
ビフォー (.xlsx):ファイルサイズが大きく、開くのに時間がかかる。
アフター (.xlsb):ファイルサイズが小さくなり、読み書き(特に「開く」「保存」)の速度が劇的に向上する。
マクロもそのまま保存できるし、機能も変わらん。もし「データが膨大で、とにかく読み書きを速くしたい」というファイルがあれば、この保存形式を試す価値は絶大じゃぞ。
そんな秘密があったなんて…!博士、今日は本当にありがとうございました!「重いのはデータのせい」というギャップが解消されましたし、これからはファイルのお掃除と、賢い保存方法を実践してみます!

うむ、その意気じゃ!Excelは非常に強力なツールじゃが、同時に「ゴミ」も溜め込みやすい性質がある。車に車検や掃除が必要なのと同じで、Excelファイルも定期的にメンテナンス(検証と掃除)をしてやることが、快適な業務の秘訣なんじゃよ。