アオウル博士: ITとセキュリティの専門家。ミマワリの頼れる相談相手。
ミマワリ: アオウルのキャラクター。PCやスマホは毎日使うけど、たまにツールがうまく使えず困ってしまう。
2025年10月に迫るOffice 2016/2019のサポート終了。使い続けるリスクとは?安全な移行プラン「Microsoft 365」と「買い切り版」を徹底比較。さらに、10年以上前の古いExcelファイル(.xls)やマクロが動かなくなる問題も、専門家の博士が会話形式で分かりやすく解決します。あなたの会社のデータ資産を守り、未来へ繋ぐための具体的な手順がここに。
博士、ちょっと聞いてもいいですか?会社の情報システム部から「お使いのOffice 2019は2025年10月でサポートが終了します」ってメールが来たんです。これって、WordとかExcelが急に使えなくなっちゃうってことなんでしょうか…?僕、毎日使ってるから不安で…。


おお、ミマワリ君。良いところに気がついたのう。それは、多くの企業や個人が直面する、非常に重要な問題じゃ。結論から言うと、2025年10月15日になった瞬間にソフトが起動しなくなる、ということはない。じゃが、そのまま使い続けるのは、嵐の日に鍵もかけず窓も開けっ放しで外出するようなもの。極めて危険な状態なんじゃよ。
えぇっ!?そんなに危険なんですか?単にソフトが古くなるだけじゃないんですね…。


うむ。今日はその「サポート終了」が具体的に何を意味するのか、そして我々が何をすべきか、じっくり解説していこう。これは君だけでなく、日本の多くのビジネスパーソンに関わる話じゃからな。
第1章:なぜ大問題? Officeの「サポート終了」が本当に意味すること
博士、「サポート終了」って、具体的に何が終わっちゃうんですか?ヘルプデスクに電話できなくなるとか、そういうことですか?


それも一部含まれるが、本質はもっと深刻じゃ。Microsoftからのサポートが終了すると、主に3つの非常に大きなリスクが発生するんじゃ。
リスク①:セキュリティリスクの爆発的増大
これが最大のリスクじゃ。サポート期間中は、ソフトウェアに見つかった弱点(脆弱性)を塞ぐための「セキュリティ更新プログラム」が定期的に提供される。家で言えば、壊れた鍵や破れた窓を定期的に修理してくれるサービスのようなものじゃな。サポートが終了すると、この修理サービスが完全にストップする。つまり、新しい侵入方法を見つけた泥棒(ウイルスやハッカー)に対して、完全に無防備な状態になるんじゃ。サポートの切れたOfficeファイルを開いただけで、会社の機密情報が盗まれたり、ランサムウェアに感染したりする危険性が格段に高まる。
リスク②:互換性の問題による業務の停滞
世の中のソフトウェアは日々進化しておる。例えば、最新版のOfficeを使っている取引先から送られてきたExcelファイルが、君の古いOffice 2019では正しく開けない、あるいはレイアウトがめちゃくちゃに崩れてしまう、といったことが起こり始める。逆もまた然りじゃ。君が作ったファイルを相手が開けない可能性もある。これは、業務の遅延や手戻りを発生させ、会社の生産性を著しく低下させる原因になるんじゃ。
リスク③:信頼の失墜とコンプライアンス違反
もし、サポート切れのOfficeが原因でウイルスに感染し、取引先の情報を漏洩させてしまったらどうなるかのう?「あの会社はセキュリティ意識が低い」と見なされ、築き上げてきた信用を一瞬で失うことになる。また、取り扱う情報によっては、法律や業界のガイドラインで定められたセキュリティ要件を満たしていないと判断され、コンプライアンス違反に問われる可能性すらあるんじゃよ。
第2章:あなたのOfficeは大丈夫? 対象バージョンと確認方法
うぅ…怖さがよく分かりました。僕のOfficeはメールによると「2019」って書いてあったんですけど、他にも対象になるバージョンってあるんですか?あと、自分のパソコンで正確に確認する方法も知りたいです!


もちろんじゃ。まずは敵を知ることから始めよう。2025年10月14日にサポートが終了する主な製品は「Office 2016」と「Office 2019」じゃ。これには、Word, Excel, PowerPoint, Outlookなどが含まれるパッケージ製品(例:Office Home & Business 2019, Office Professional 2016など)が該当する。
【自分のOfficeバージョンの確認方法】
確認方法はとても簡単じゃ。ExcelかWordを起動して、以下の手順で進めてごらん。
- まず、左上の「ファイル」タブをクリックする。
- 次に、左側のメニューから「アカウント」をクリックする。
- 画面の右側に「製品情報」という欄があるじゃろう。そこの下に「Microsoft Office Professional Plus 2019」や「Microsoft Office Home and Business 2016」といった形で、君が使っているOfficeの正式名称が書かれておる。
ここに「2016」や「2019」という数字が含まれていたら、サポート終了の対象じゃ。ちなみに、「Microsoft 365」と書かれている場合は、常に最新版に自動更新されるサブスクリプション版なので、今回のサポート終了の心配はないぞ。
第3章:迫られる選択! 今すぐ検討すべき3つの移行プラン
確認したら、やっぱり「Office Professional 2019」でした…。これはもう、新しいのに乗り換えるしかないんですね。どんな選択肢があるんでしょうか?


その通りじゃ。賢明な判断じゃな。大きく分けて、企業や個人が選べる道は3つある。それぞれのメリットとデメリットをしっかり理解して、自分たちの働き方に合ったものを選ぶことが重要じゃ。
プラン①:Microsoft 365へ移行する【最も推奨】
これは月額または年額で利用料を支払う「サブスクリプション」モデルじゃ。
メリット:
- 常に最新・安全:セキュリティ更新はもちろん、新しい機能もどんどん追加される。将来のサポート終了を心配する必要がない。
- 多機能:大容量のクラウドストレージ「OneDrive」や、ビジネスチャット「Teams」などもセットで使えるプランが多い。
- マルチデバイス対応:1ライセンスでPC、スマホ、タブレットなど複数のデバイスにインストールできる。
デメリット:
- 継続的な費用:利用し続ける限り、コストが発生する。
プラン②:最新の永続ライセンス版(Office 2021など)へアップグレードする
これは従来通り、最初に一括で料金を支払う「買い切り」モデルじゃ。
メリット:
- 追加費用なし:一度購入すれば、サポート期間内は追加の費用がかからない。
デメリット:
- 機能が固定:新しい機能は追加されず、購入時点の機能のまま使い続けることになる。
- いずれまたサポート終了が来る:Office 2021のサポート終了は2026年10月13日と、実はあまり時間がない。将来、また同じ乗り換えの問題に直面する。
プラン③:現状維持【非推奨】
これは、リスクを承知の上でサポートが切れたOfficeを使い続ける選択じゃ。
メリット:
- 費用がかからない。
デメリット:
- 第1章で説明した全てのリスク(セキュリティ、互換性、信用の失墜)を背負うことになる。
インターネットに一切接続しない完全に独立したPCで、外部とのファイルのやり取りも全くない、という特殊な環境でない限り、この選択肢は絶対に避けるべきじゃ。
第4章:【最重要】古いExcelデータの救出と安全な取り扱い術
なるほど…会社の将来を考えると、やっぱりMicrosoft 365が良さそうですね。…あ、でも博士!もう一つ、ものすごく心配なことがあるんです!僕の部署には、10年以上前から引き継がれてきた秘伝のタレみたいなExcelファイルがたくさんあるんです。拡張子が「.xls」っていう古い形式のやつで…。新しいOfficeにしたら、こういう古いファイルってちゃんと開けるんでしょうか?特に、複雑なマクロが組んであるファイルが動かなくなったら業務が止まっちゃいます…!


ミマワリ君、そこが今回の移行プロジェクトで最も重要なポイントじゃ!素晴らしい着眼点じゃよ。過去のデータという「資産」を、安全かつ確実に未来へ引き継ぐための手順を伝授しよう。焦らず、一つひとつ丁寧に進めることが肝心じゃ。
STEP①:まずは現状把握! ファイルの「棚卸し」
まずは、社内のサーバーや各々のPCに、どれだけの古い形式のファイル(.xls)が眠っているか把握する必要がある。エクスプローラーの検索窓に「*.xls」と入力して検索すれば、該当するファイルを見つけ出せるぞ。どの部署の、どの業務で、どんなファイルが使われているかリストアップするんじゃ。
STEP②:「互換モード」からの脱却! ファイル形式の変換
最新のExcelで古い「.xls」ファイルを開くと、ウィンドウの上部に「[互換モード]」と表示されるはずじゃ。これは「古い形式のファイルなので、一部の新しい機能は使えませんよ」というサインじゃな。このままでは宝の持ち腐れじゃ。
このファイルを最新の形式に変換するには、[ファイル] → [情報] → [変換] の順にクリックする。これだけで、ファイルが新しい形式に生まれ変わる。
- マクロを含まない通常のExcelファイル → .xlsx 形式で保存される。
- マクロを含むExcelファイル → .xlsm 形式で保存される。(※ここは特に注意が必要!)
変換すると、ファイルサイズが軽くなったり、最新の関数やグラフが使えたりと、良いこと尽くめじゃ。
STEP③:最大の難関! マクロの動作検証
さて、ここが一番の山場じゃ。変換したマクロ付きファイル(.xlsm)が、これまで通り寸分の狂いもなく動くか、徹底的にテストする必要がある。なぜなら、古いバージョンのExcelで使われていた一部の命令文(コード)が、最新版では仕様変更されていたり、廃止されていたりすることがあるからじゃ。
いきなり全てのファイルを変換するのではなく、まずはテスト用のPCに新しいOffice(Microsoft 365)を入れ、特に重要なファイルから一つずつ動作確認を行うんじゃ。「ボタンを押しても反応しない」「計算結果がおかしい」といった問題が見つかった場合は、マクロの修正が必要になる。これは専門知識が必要になることもあるので、早めに情報システム部門や専門家に相談するのが得策じゃ。
STEP④:安全な保管とバックアップ
変換とテストが完了したら、それで終わりではない。必ず、変換前の古いファイル(.xls)と、変換後の新しいファイル(.xlsx / .xlsm)の両方を、しばらくの間は保管しておくこと。万が一、変換後のファイルに予期せぬ不具合が見つかった場合でも、すぐに元の状態に戻せるようにしておくためじゃ。いわば「命綱」じゃな。そして、これらの重要なファイルは、PCの中だけでなく、OneDriveなどのクラウドストレージや、社内のバックアップサーバーに必ず複製を保管しておくこと。これで安心して新しいOffice環境へ移行できるぞ。
なるほど…!ただ新しいソフトを入れれば終わり、じゃなくて、過去のデータという財産をちゃんと新しい環境に適応させてあげる作業が必要なんですね。なんだか、家の引っ越しみたいです。ただ荷物を運ぶだけじゃなくて、古い家具が新しい家でも使えるかチェックしたり、整理整頓したりするのに似てますね。博士、おかげでやるべきことが明確になりました!本当にありがとうございます!


うむ、まさにその通りじゃ!「サポート終了」は、一見すると面倒でコストのかかる厄介事に思えるかもしれん。しかし、これは会社のセキュリティ体制を強化し、業務効率を見直し、そして過去のデータ資産を整理して未来に活かすための、またとない絶好の機会なんじゃ。期限ギリギリになって慌てるのではなく、今から計画的に準備を進めることが、成功の鍵じゃよ。困ったことがあれば、いつでもまた聞きに来なさい。