インターネットが当たり前になった今、私たちの顧客は「パソコンで情報収集し、通勤電車でスマホから再訪問して、自宅のタブレットで購入する」といったように、複数のデバイスを行き来しながらウェブサイトを利用しています。
もはや、「この人はPCユーザー」「この人はスマホユーザー」と分けて考えるのは現実的ではありません。しかし、従来のウェブサイト分析では、デバイスが変わると「別のユーザー」としてカウントされてしまうことがよくあります。
これは、まるで一人の顧客が来店するたびに違う顔に見えてしまい、どんな人なのか、何を求めているのかが掴みきれないようなものです。
なぜ「同一ユーザー」を識別する必要があるのか?
異なるデバイスからのアクセスを別々のユーザーとして認識してしまうと、以下のような問題が起こります。
- 顧客行動の全体像が見えない: ある顧客がどのようにウェブサイトと関わっているのか、ジャーニー全体を把握できません。
- 正確な効果測定ができない: PCで広告を見てスマホで購入、といったデバイスをまたいでのコンバージョン経路が追跡できず、マーケティング施策の本当の効果を評価できません。
- パーソナライズが難しい: デバイスごとに情報が分断されているため、その顧客に合わせた最適な情報提供や体験を提供しにくくなります。
- 分析データが不正確になる: 重複してカウントされるユーザーがいるため、ユニークユーザー数やコンバージョン率などの重要な指標が実態と乖離してしまう可能性があります。
つまり、「同一ユーザー」を正しく識別しないと、顧客を深く理解できず、効果的なマーケティングやサービス改善が行えないのです。
どうやって「同一ユーザー」を見分けるのか?
それでは、どうすればパソコンとスマートフォンからのアクセスが、実は同じ一人のユーザーだと判別できるのでしょうか?いくつかの方法がありますが、ここでは代表的なものをご紹介します。
- 「ログイン」を活用する方法:
- 仕組み: お客様がウェブサイト上でアカウントを作成し、ログインして利用する場合に有効です。ログイン情報(お客様IDなど)を基に、どのデバイスからアクセスしても同じお客様だと識別します。
- メリット: 最も精度が高く、確実な方法です。お客様ごとの詳細な行動や興味関心を把握できます。
- デメリット: ログインしないお客様には使えません。
- アクセス解析ツールの機能を使う方法(Google Analyticsなど):
- 仕組み: お客様がログインした際にウェブサイト側で発行した「ユーザーID」を、アクセス解析ツールに送信することで、ツールがそのIDを基にデバイスをまたいだ行動を紐づけてくれます。(これは多くの場合、上記のログインとセットで使われます。)
- Google Analytics 4 (GA4) には、Googleアカウントにログインしているユーザー情報を活用してクロスデバイス行動を推定する「Google Signals」という機能もあります。
- メリット: アクセス解析ツールのレポート上でクロスデバイスの状況を確認・分析できます。Google Signalsを使えば、ウェブサイト側の大きな改修なしに推定データを得られる場合があります。
- デメリット: ユーザーIDを使う場合は、ウェブサイト側の実装が必要です。Google Signalsは推定データであり、精度に限界があります。
これらの方法を組み合わせることで、より多くのユーザーに対してクロスデバイスでの識別が可能になります。
クロスデバイス計測で変わること
「同一ユーザー」を識別できるようになると、以下のようなことが可能になります。
- 顧客行動の真実が見える: PCで知った商品がスマホで検討され、タブレットで購入に至る、といった顧客の実際の行動フローが明確になります。
- 最適な顧客体験を提供できる: あるデバイスでの行動履歴に基づいて、別のデバイスでアクセスした際におすすめ商品を提示するなど、スムーズな体験を提供できます。
- 広告費を最適化できる: どのデバイスの、どの広告が最終的な成果につながっているのかが正確に分かり、無駄な広告費を削減できます。
- より深い顧客理解に基づく施策立案: デバイス横断での分析から得られるインサイトを基に、効果的なマーケティング戦略やコンテンツ改善を進められます。
大切なのは「お客様への配慮」
クロスデバイス計測は非常に強力な分析手法ですが、お客様のプライバシーへの配慮が最も重要です。どのような情報を取得し、どのように利用するのかを明確にお客様に伝え、同意を得るプロセスを適切に行う必要があります。
まとめ
現代の顧客は複数のデバイスを当たり前に使い分けています。彼らをデバイスごとに「別人」として扱うのではなく、「一人の大切な顧客」として理解するためには、クロスデバイス計測が不可欠です。
ログイン機能の活用やアクセス解析ツールの設定を見直すことで、あなたの顧客理解は格段に深まります。
もし、「どうすればいいか分からない」「もっと詳しく知りたい」といったご要望がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。あなたのウェブサイトの状況に合わせた最適な方法をご提案し、より正確な顧客理解とビジネス成長のお手伝いをいたします。