Windows Update後、突然共有フォルダやNASに繋がらない?その原因は古い通信方式「SMBv1」かも。IT専門家がトラブルの原因、SMBv1の危険性、今すぐできる応急処置と根本的な解決策を会話形式で徹底解説。あなたの会社のデータを守るための知識がここにあります。
は、博士〜!大変です!会社中が大パニックになっています!
今朝、出社したら、いつも使っているはずの営業部の共有フォルダにアクセスできなくなってるんです!「ネットワークパスが見つかりません」って表示されて…。
僕だけじゃなくて、隣の席の佐藤さんも、経理部の山田さんも繋がらないって大騒ぎで…。昨日までは普通に使えていたのに、一体何が起きたんでしょうか!?


おお、ミマワリ君か。落ち着きなさい。そのパニック症状、おそらく原因は9月の「Windows Update」じゃろう。
多くの会社で同じような問題が今まさに発生しておる。昨日まで使えていたものが突然使えなくなる…それは不安じゃろうな。じゃが、原因が分かれば対策は立てられる。一つずつ確認していこう。
Windows Update…!そういえば、昨日の夜、PCをシャットダウンするときに「更新してシャットダウン」を選んだ気がします!
それが原因なんですか?でも、セキュリティのためにアップデートは大事だって博士も言ってたじゃないですか!


その通りじゃ。Windows Updateを適用したのは正しい判断じゃ。問題は、アップデートそのものではなく、アップデートによって、ある「古い通信ルール」が無効化されたことにあるんじゃ。
その古い通信ルールの名前を「SMBv1(エスエムビー ブイワン)」という。
【原因】犯人は「SMBv1」!いったい何者?
エスエムビー…ブイワン…?初めて聞く言葉です。呪文か何かですか…?
それが、僕たちの会社の共有フォルダと何の関係があるんですか?


ふむ。では、分かりやすく例え話で説明しよう。
まず「SMB」というのは、社内ネットワークでファイルやプリンターを共有するための「道路」のようなものじゃと思ってくれ。君のパソコンから共有フォルダ(NASなど)へデータをやり取りする際に、この「SMB」という道路を通るんじゃ。
そして、この「SMB」にはバージョンがあってな。
- SMBv1:
1990年代に作られた、とても古い「舗装されていない砂利道」。 - SMBv2 / SMBv3:
2000年代以降に作られた、新しくて安全な「片側三車線の高速道路」。
君のパソコンはWindows Updateによって「これからは安全な高速道路(SMBv2/v3)しか使いません!」と宣言した。じゃが、会社の共有フォルダ(NAS)や複合機が古くて「うちは昔ながらの砂利道(SMBv1)しか持ってないよ…」という状態じゃった。その結果、パソコンと共有フォルダを繋ぐ道路がなくなり、通信できなくなってしまった、というわけじゃ。
なるほど!道路の例え、すごく分かりやすいです!
僕のPCは新しい高速道路を使おうとしてるのに、会社のサーバーが古い砂利道にしか対応してなかったから、道が繋がらなくなっちゃったんですね。
でも、どうしてMicrosoftは、今まで使えていた砂利道(SMBv1)を、急に通行止めにしちゃったんですか?少しぐらい使えたっていいじゃないですか…。


【重要】そこが今回の最も重要なポイントじゃ!MicrosoftがSMBv1を無効化したのは、それが「砂利道」などというレベルではなく、「海賊や山賊がうろつく、非常に危険な抜け道」だからなんじゃ!
実はこのSMBv1、設計が古すぎて、セキュリティ上に致命的な欠陥(脆弱性)をいくつも抱えておる。過去には、この欠陥を悪用した大規模なサイバー攻撃が世界中で発生し、甚大な被害を出した歴史があるんじゃ。
その代表格が、2017年に世界中を震撼させたランサムウェア「WannaCry(ワナクライ)」じゃ。
ワナクライ…!聞いたことあります!パソコンの中のファイルを全部人質にとって、身代金を要求してくる恐ろしいウイルスですよね…。あれが、このSMBv1と関係があったんですか!?


その通り。WannaCryは、まさにこのSMBv1の脆弱性を利用して、ネットワークからネットワークへと自己増殖しながら感染を拡大させたんじゃ。
Microsoftは何年も前から「SMBv1は危険だから使うのをやめてください!」と警告し続けてきた。そして、ついに今回のアップデートで、ユーザーを危険から守るために、この危険な抜け道を強制的に封鎖したというわけじゃ。急な話に聞こえるかもしれんが、これはセキュリティ対策としては必然の流れなんじゃよ。
【解決策】どうすればまた繋がるようになる?
そ、そんなに危険なものだったんですね…。知らずに使い続けていたなんて、ゾッとします…。
理由はよく分かりました。でも、このままだと仕事になりません!どうすれば、また共有フォルダにアクセスできるようになるんですか?博士、助けてください!


うむ。解決策は大きく分けて2つある。ワシが強く推奨する「根本的な解決策」と、あくまで一時しのぎの「応急処置」じゃ。どちらを選ぶべきか、よく聞いて判断するんじゃぞ。
① 根本的な解決策(強く推奨):古い機器を買い替える

一番安全で、確実で、将来性のある解決策は、SMBv1にしか対応していない古い共有フォルダ(NAS)や複合機を、新しいものに買い替える(リプレースする)ことじゃ。
砂利道の問題を解決するには、砂利道の側に新しい高速道路を引いてあげるのが一番じゃろう? 新しい機器は、当然ながら安全なSMBv2やSMBv3に対応しておる。これなら、Windows Updateを適用した最新のパソコンからも、何の問題もなく安全にアクセスできるようになる。
か、買い替えですか…。確かにおっしゃる通りですけど、費用もかかるし、データ移行も大変そうだし、すぐに決断するのは難しいかもしれません…。


その気持ちは分かる。じゃが、今回の問題は「氷山の一角」じゃと考えた方がよい。
今、SMBv1しか使えないような古い機器は、セキュリティだけでなく、性能、省エネ、安定性など、あらゆる面で現代のビジネスの足を引っ張る「負の遺産(レガシーシステム)」となっておる。今回のトラブルを、会社のITインフラを見直す良い機会と捉えるべきじゃ。
経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」という言葉を聞いたことがあるかな?これは、古いシステムを使い続けることで、将来的に大きな経済的損失を生むという問題じゃが、今回のSMBv1問題は、まさにその崖っぷちで起きた落石のようなものなんじゃよ。
② 応急処置(非推奨):パソコン側でSMBv1を一時的に有効化する
うーん、根本的な解決が大事なのは分かりました。でも、稟議とか色々あって、買い替えにはどうしても時間がかかります。今日の業務が止まっちゃってるので、とりあえず今すぐ繋がるようにする方法はないんでしょうか…?


…やむを得ん。あくまで「自己責任」で、かつ「機器を買い替えるまでのごく短期間」という約束でなら、方法はある。
それは、Windows Updateで無効化されたSMBv1を、手動で再度有効化する方法じゃ。パソコン側に「危険な砂利道(SMBv1)も、一時的に通っていいですよ」と許可を与えるわけじゃな。
じゃが、これは「玄関の鍵を開けっ放しで外出する」のと同じくらい危険な行為だと肝に銘じておくように!ランサムウェアなどの攻撃者に「どうぞ入ってきてください」と扉を開けているようなものじゃからな。
ご、ごくり…。危険なのは承知しました。でも、背に腹は代えられません。その方法を教えてください!


よかろう。ただし、必ず会社のIT管理者や責任者に報告・相談した上で行うんじゃぞ。勝手にやるでないぞ。
【SMBv1を有効化する手順(Windows 11の場合)】
- 「スタート」ボタンを右クリックし、「設定」を開く。
- 左側のメニューから「アプリ」を選び、「オプション機能」をクリックする。
- 一番下までスクロールし、「Windows のその他の機能」をクリックする。
- 新しいウィンドウが開くので、一覧の中から「SMB 1.0/CIFS ファイル共有のサポート」という項目を探す。
- この項目の左側にあるチェックボックスをオンにする。
- 「OK」をクリックすると、必要なファイルの検索と適用が始まる。
- 処理が終わったら、パソコンを再起動するように求められるので、必ず再起動する。
再起動後、今まで繋がらなかった共有フォルダにアクセスできるようになっているはずじゃ。じゃが、何度も言うが、これはあくまで一時的な延命措置。根本的な問題(古い機器)が解決したわけではないことを忘れるでないぞ。
【まとめ】今回のトラブルから学ぶべきこと
博士、ありがとうございます!おかげで原因も対処法もよく分かりました!
早速、上司とIT管理者に報告して、まずは応急処置で業務を復旧しつつ、急いで新しい機器への買い替えを検討するように提案します!本当に助かりました!


うむ、それが最善の判断じゃ。最後に、今回のトラブルから我々が学ぶべき教訓を3つにまとめておこう。
- 「動いているからOK」は危険信号。
古いシステムを使い続けることは、見えないリスクを常に抱えているのと同じ。問題が起きてから慌てるのではなく、計画的に新しいものへ更新していく意識が重要じゃ。 - セキュリティアップデートは止めない。
今回のような一時的な不具合を恐れてアップデートを止めてしまうと、もっと深刻なサイバー攻撃の被害に遭う可能性がある。アップデートは原則として適用し、問題が起きたら原因を特定して対処するのが正しい姿勢じゃ。 - ITは「コスト」ではなく「投資」。
新しい機器への買い替えは、目先の出費(コスト)に見えるかもしれん。じゃが、セキュリティの強化、業務効率の向上、故障リスクの低減など、将来的に会社に利益をもたらす「投資」なんじゃ。
今回のトラブルを良い教訓として、会社全体のIT環境をより安全で快適なものにしていくんじゃぞ、ミマワリ君!
はいっ!博士!今日の教訓、忘れません!本当にありがとうございました!
